インビザライン治療は、目立たない矯正方法として人気を集めていますが、「できるだけ早く治療を終えたい」と考える方も多いのではないでしょうか。矯正治療は一般的に時間がかかるものですが、適切な方法で治療期間を短縮することは可能です。
私は日本矯正歯科学会認定医として多くの患者さんのインビザライン治療に携わってきました。そこで得た経験から、治療期間を効果的に短縮するための方法をご紹介します。
インビザライン治療の一般的な期間とは
インビザライン治療の期間は、症例の複雑さによって大きく異なります。軽度の歯並びの乱れであれば1年以内、中程度の症例で1年半〜2年、複雑な症例では2〜3年程度かかることが一般的です。
部分矯正の場合は比較的短く、1年以内に終わることが多いです。一方、全体矯正の場合は2〜3年ほどかかります。お子さんの場合は代謝が活発なため、大人よりも治療期間が短くなる傾向があります。
治療期間が長引く主な原因としては、マウスピースの装着時間不足、口内トラブルの発生、マウスピースの紛失や破損、治療計画の修正(リファインメント)が必要になった場合などが挙げられます。
それでは、インビザライン治療の期間を短縮するための7つの方法を詳しく見ていきましょう。

方法1: PBMヒーリングライト(光加速矯正装置)の活用
インビザライン治療期間を劇的に短縮する方法として、最も効果的なのがPBMヒーリングライト(光加速矯正装置)の活用です。これは850nmの近赤外線光を歯の周辺組織に照射することで、細胞を活性化させ、歯の移動をスピードアップさせる装置です。
PBMヒーリングライトの仕組みは、歯の周辺組織に近赤外線光を照射することによって細胞を活性化させ、歯を支える歯槽骨の細胞の代謝が促されることにより、通常よりも歯を速く移動させることができるというものです。
実際の使用方法は非常に簡単で、1日8分間(上下顎各4分程度)装置を装着するだけです。ご自宅でテレビを見たり、くつろぎながら使用できるため、忙しい方でも継続しやすいのが特徴です。
この方法の最大のメリットは、治療期間を最大で半分に短縮できる可能性があることです。さらに、矯正による痛みも軽減されるため、より快適に治療を進めることができます。
方法2: マウスピースの装着時間を厳守する
インビザライン治療の期間を短縮するための基本中の基本は、マウスピースの装着時間を厳守することです。インビザラインは1日20時間以上の装着が推奨されていますが、これを守れないと歯の移動が予定通り進まず、結果的に治療期間が延びてしまいます。
食事や歯磨きの時以外は常にマウスピースを装着することを心がけましょう。特に就寝中は8時間程度連続して装着できる貴重な時間です。
「少しくらい装着時間が短くても大丈夫だろう」と考えてしまいがちですが、装着時間が18時間を下回ると、歯の移動が著しく遅くなることが分かっています。
私の臨床経験からも、装着時間をしっかり守っている患者さんは治療の進行が早く、予定通りに治療が完了することが多いです。逆に、装着時間が不十分な患者さんは、治療期間が当初の予定よりも大幅に延びてしまうケースが少なくありません。
方法3: チューイーを効果的に使用する
チューイーとは、マウスピースをより歯にフィットさせるための専用の咬合器具です。新しいマウスピースに交換した際、最初は歯とマウスピースの間に隙間があることがあります。チューイーを使用することで、この隙間を埋め、マウスピースを歯にしっかりと密着させることができます。
チューイーの使用方法は非常に簡単です。マウスピースを装着した状態でチューイーを噛み、5〜10分程度その状態を維持します。これを1日1〜2回行うことで、マウスピースの適合性が向上し、歯の移動がより効率的に進みます。
特に新しいマウスピースに交換した直後は、チューイーを積極的に使用することをおすすめします。マウスピースが歯にしっかりとフィットしていないと、予定通りに歯が動かず、治療期間が延びてしまう原因となります。
患者さんからは「チューイーを使うようになってから、マウスピースがしっかりとはまるようになった」という声をよく聞きます。小さな工夫ですが、治療期間の短縮に大きく貢献するポイントです。
方法4: 定期的な通院と調整を欠かさない
インビザライン治療中は、定期的な通院が必要です。通常、4〜8週間に1回程度の頻度で歯科医院を受診し、治療の進行状況を確認します。この定期検診を欠かさず受けることが、治療期間を短縮するためには非常に重要です。
定期検診では、歯の移動が計画通りに進んでいるかを確認し、必要に応じて調整を行います。もし予定通りに歯が動いていない場合は、早期に対策を講じることができるため、治療の遅延を最小限に抑えることができます。
また、通院時には歯科医師や歯科衛生士から、より効果的なマウスピースの装着方法や口腔ケアのアドバイスを受けることができます。これらの専門的なアドバイスを実践することで、治療の効率が向上し、結果的に治療期間の短縮につながります。
「忙しくて通院が難しい」という方もいらっしゃるかもしれませんが、予約をキャンセルしたり先延ばしにしたりすると、それだけ治療完了が遅れてしまいます。可能な限り予定通りに通院することを心がけましょう。
方法5: 口腔内を清潔に保つ
インビザライン治療中は、口腔内の清潔を保つことが非常に重要です。虫歯や歯周病などの口腔トラブルが発生すると、治療を一時中断しなければならない場合があり、結果的に治療期間が延びてしまいます。
マウスピースを装着する前には必ず歯磨きとフロスを行い、口腔内を清潔な状態に保ちましょう。また、マウスピース自体も定期的に洗浄し、清潔に保つことが大切です。
特に注意したいのが、マウスピースを装着したまま甘い飲み物を摂取することです。マウスピースの内側に甘い液体が入り込むと、虫歯のリスクが高まります。飲み物を摂取する際は、水以外はマウスピースを外すようにしましょう。
定期的な歯科クリーニングも重要です。インビザライン治療中でも、3〜4ヶ月に1回程度の頻度でプロフェッショナルクリーニングを受けることをおすすめします。これにより、自分では取り除けない歯垢や歯石を除去し、口腔内を健康な状態に保つことができます。

方法6: マウスピースの交換タイミングを最適化する
インビザライン治療では、通常1〜2週間ごとにマウスピースを新しいものに交換していきます。この交換タイミングを最適化することも、治療期間の短縮につながります。
基本的には歯科医師の指示に従って交換することが重要ですが、PBMヒーリングライトを使用している場合や、歯の動きが良好な場合は、交換間隔を短くできることがあります。例えば、通常2週間ごとの交換を1週間ごとに短縮できれば、全体の治療期間も半分になる可能性があります。
ただし、自己判断で交換間隔を変更することは避け、必ず歯科医師と相談の上で決定するようにしましょう。無理に早く交換すると、歯が十分に動いていない状態で次のステップに進むことになり、かえって治療が長引く原因となることがあります。
当院では、患者さん一人ひとりの歯の動きを慎重に評価し、最適な交換タイミングを提案しています。PBMヒーリングライトを併用することで、多くの患者さんが通常よりも短い間隔でマウスピースを交換できています。
方法7: マウスピースの取り扱いに注意する
マウスピースの紛失や破損は、治療期間が延びる大きな原因となります。新しいマウスピースを作製する間、治療が中断してしまうためです。
マウスピースを外す際は、必ず専用のケースに保管しましょう。ティッシュに包んだり、テーブルの上に直接置いたりすると、誤って捨ててしまったり、紛失したりするリスクが高まります。
また、マウスピースは熱に弱いため、高温の場所に放置しないよう注意が必要です。車の中や直射日光の当たる場所に置いておくと、変形してしまうことがあります。変形したマウスピースは適切に機能しないため、治療の遅延につながります。
万が一マウスピースを紛失したり破損したりした場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう。状況に応じて、前のステージのマウスピースに戻るか、次のステージに進むかを指示してもらえます。
予備のマウスピースを持っておくことも有効な対策です。特に旅行や出張が多い方は、前のステージのマウスピースを捨てずに保管しておくと、緊急時に役立ちます。
インビザライン治療期間短縮のまとめ
インビザライン治療の期間を短縮するためには、以下の7つの方法が効果的です。
- PBMヒーリングライト(光加速矯正装置)を活用する
- マウスピースの装着時間(1日20時間以上)を厳守する
- チューイーを効果的に使用してマウスピースを密着させる
- 定期的な通院と調整を欠かさない
- 口腔内を清潔に保ち、トラブルを防止する
- マウスピースの交換タイミングを最適化する
- マウスピースの取り扱いに注意し、紛失・破損を防ぐ
これらの方法を実践することで、インビザライン治療の期間を大幅に短縮できる可能性があります。特にPBMヒーリングライトの使用は、治療期間を最大で半分に短縮できる可能性があり、非常に効果的です。
インビザライン治療は、正しく行えば効率的に歯並びを改善できる素晴らしい矯正方法です。少しでも早く美しい歯並びを手に入れたいという方は、ぜひこれらの方法を試してみてください。
当院では、患者さん一人ひとりに最適な治療計画を提案し、できるだけ短期間で効果的な治療を提供できるよう努めています。インビザライン治療についてご不明な点があれば、お気軽に三宮Lulu矯正歯科までご相談ください。

著者情報
三宮Lulu矯正歯科 院長 竹内 優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会
