歯並びが悪化する原因とその影響
朝、鏡を見たときに「以前より歯がガタガタになってきた?」と感じたことはありませんか。実は、歯並びは年齢とともに少しずつ変化していくものなんです。
歯並びの悪化は見た目だけの問題ではありません。噛み合わせが悪くなることで顎に負担がかかり、頭痛や肩こりの原因になることもあります。さらに、歯磨きがしづらくなって虫歯や歯周病のリスクも高まるのです。
私自身、30代半ばで前歯が少しずつ重なり始めたことに気づき、歯科医院で相談したことがあります。そのとき初めて、歯並びは一生をかけて変化し続けるものだと知りました。
この記事では、歯並びが悪化する6つの主な原因と、それを改善するための効果的な方法について詳しく解説します。あなたの大切な歯を守るための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
原因1: 加齢による歯並びの変化
「若い頃は歯並びが良かったのに…」
こんな声をよく耳にします。実は、加齢による歯並びの変化は自然な現象なのです。年を重ねるにつれて、歯は自然と前方に移動する傾向があります。これは歯槽骨(歯を支える骨)の自然な吸収や歯の摩耗によるもので、特に前歯の重なりや突出が目立つようになります。
加齢とともに顎の筋力も低下します。顎の筋力が弱まると、適切な咬合圧が保たれず、歯が徐々に移動しやすくなるのです。これは多くの人にとって避けられない現象と言えるでしょう。
私の祖母は80代になっても自分の歯をほとんど残していましたが、若い頃の写真と比べると明らかに前歯が前に出てきていました。彼女は「年とともに口元が変わるのは仕方ないこと」と言っていましたが、実は適切なケアで進行を遅らせることができたのかもしれません。
原因2: 歯周病の進行
歯周病は単に歯茎の病気というだけでなく、歯並びにも大きな影響を与えます。歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまうのです。
骨が溶けると歯の安定性が失われ、歯がぐらついたり、位置がずれたりします。さらに進行すると、最終的には歯が抜け落ちてしまうか、抜歯せざるを得ない状態になることも。
特に怖いのは、歯周病の初期段階ではほとんど自覚症状がないこと。気づいたときには既に歯を支える骨が溶けてしまっていることも少なくありません。
歯周病の予防と適切な口腔ケアは、健康な歯並びを維持するために不可欠です。歯並びの変化や違和感を感じたら、早めに歯科医師へ相談することをお勧めします。
原因3: 悪習慣や癖による影響
日常生活の中で無意識にしている行動が、実は歯並びを悪化させている可能性があります。特に気をつけたい習慣や癖をいくつか紹介します。
まず、片側だけで食事をする「片側咀嚼」は、歯並びに深刻な影響を及ぼします。この習慣は、使われる側の歯に過度な負担をかけ、歯の摩耗や顎の成長に左右差を生じさせてしまいます。硬い食べ物を片側だけで噛む癖を続けていると、顔の輪郭が歪む原因にもなるのです。
また、頬杖をつく習慣も要注意です。頬杖をつくと、下から支える手と頭の重さに歯列が挟まれる状態になり、歯列に偏った力が加わります。これはうつぶせ寝や横向きで眠ることも同様で、歯列の一部に大きな負担がかかり歯並びに影響するのです。
寝ている間の歯ぎしりや、無意識での歯の食いしばりも歯並びを悪化させる要因になります。これらの習慣は歯がすり減る原因になり、噛み合わせも変わってきます。食いしばる力が強いと歯が割れることもあり、ひどい場合は抜歯に至るケースもあるのです。
私の友人は仕事中に無意識に歯を食いしばる癖があり、数年後には前歯が少しずつ重なり始めました。歯科医師に相談したところ、ナイトガードの使用を勧められ、それ以上の悪化を防ぐことができたそうです。
舌癖や口呼吸の影響
舌を噛んだり、舌で歯を押したりといった「舌癖」も歯並びを悪くする原因になります。舌は非常に強い筋肉なので、常に歯を押し続けると、少しずつ歯の位置がずれていくのです。
口呼吸も歯並びに悪影響を与えます。口呼吸によって長時間口が開いたままの状態になると、口元や舌の筋肉が衰えてしまいます。筋力が低下すると前歯が前方に倒れやすくなり、出っ歯の発症や悪化リスクが高まるのです。
口呼吸の原因である鼻炎や姿勢の悪さを解消することで、不正咬合が起きる前に防ぐことができます。日常的な小さな習慣の積み重ねが、長い目で見ると歯並びに大きな影響を与えるのです。
原因4: 親知らずの影響
親知らずは歯列の一番奥に生える第三大臼歯のことです。大人の歯が生え揃って綺麗な歯並びであっても、後から生えてくる親知らずに押されて歯並びがガタガタになることがあります。
特に親知らずが横向きに前の歯を押す状態で生えてくる場合、大人になってからも歯並びを悪くする原因となります。親知らずが生えるスペースが足りないと、他の歯を押し出すように生えてくるため、前歯が徐々に重なり合うようになるのです。
私の場合、20代後半で親知らずが生え始めた頃、それまで問題なかった下の前歯が少しずつ重なり始めました。歯科医師に相談したところ、親知らずを抜歯することを勧められ、抜歯後は歯並びの悪化が止まりました。
親知らずが歯並びに影響を与えているかどうかは、歯科医院でのレントゲン検査で確認できます。歯並びの変化を感じたら、親知らずの状態も確認してもらうとよいでしょう。
不適切な歯科治療や中断の影響
虫歯や歯周病の悪化によって歯列の途中の歯を抜歯したまま放置すると、空いているスペースに隣の歯が傾いてきて歯並びが悪くなることがあります。
また、仮歯が取れたままになっていると、かみ合うはずの歯が伸びてきて噛み合わせのバランスが悪くなる場合があります。歯科治療を中断せず、最後まできちんと完了させることが大切です。
歯科治療は一度で終わらないことも多いので、定期的な通院を心がけましょう。特に虫歯の治療後や被せ物を入れた後は、定期的なチェックが必要です。
原因5: ストレスによる歯ぎしりや食いしばり
現代社会では多くの人がストレスを抱えています。そのストレスが原因で無意識に行ってしまう歯ぎしりや食いしばりの習慣は、歯並びに大きな影響を与えるのです。
特に歯ぎしりは、前歯に大きな圧力をかけます。上の前歯が下の前歯に強く当たることで、上の歯が外側に、下の歯が内側に押し出されてしまうのです。これにより歯並びが乱れ、見た目の問題だけでなく、噛み合わせの不均衡や顎関節の不調を引き起こす可能性があります。
夜間の歯ぎしりは自分では気づきにくいものです。朝起きたときの顎の疲労感や頭痛、歯の痛みなどがある場合は、夜間の歯ぎしりを疑ってみましょう。
ストレス管理と適切な対処法が、歯並びの保護にも繋がります。リラクゼーション技術の習得や、就寝時のマウスピース(ナイトガード)の使用が効果的な場合もあります。
あなたはストレスを感じたとき、無意識に歯を食いしばっていませんか?
食習慣と歯並びの関係
現代の食生活は、柔らかい食べ物が中心になりがちです。しっかり噛まずに食べる習慣が続くと、顎の発達が不十分になり、歯並びにも影響を与えます。
よく噛むことは顎の筋肉を鍛え、健康な歯並びを維持するために重要です。一方で、片側だけで噛む癖がある場合、歯並びが悪くなるだけでなく、顎や顔の輪郭が歪む原因にもなります。
意識的に左右均等に噛むようにしましょう。もしも虫歯などがある場合は治療に行き、両側でしっかり噛める状態を維持することが大切です。
原因6: 加齢による口周りの筋力低下
年齢を重ねると体力が落ちてきますが、お口の周りの筋肉も例外ではありません。頬と舌のバランスで保たれている歯列は、舌の筋力が低下すると内側に傾き、頬の筋肉が弱くなると外側に傾いてくることがあります。
お口周りの筋力低下は口角が下がることにもつながり、表情全体の印象も変わってきます。加齢による変化は避けられないものですが、適切なケアや運動で進行を遅らせることは可能です。
私の母は60代になってから意識的に「あいうえお体操」を始めました。毎日続けることで口周りの筋肉が鍛えられ、70代になった今でも若々しい表情を保っています。小さな習慣が大きな違いを生むことを実感した出来事でした。
口周りの筋肉を鍛える簡単な方法としては、「あいうえお」をはっきり発音する練習や、頬を膨らませたり吸い込んだりする運動があります。毎日の歯磨きのついでに行うとよいでしょう。
歯並びの悪化がもたらす健康への影響
歯並びの悪化は見た目の問題だけではありません。実は全身の健康にも様々な影響を与えることがわかっています。
まず、食べ物をうまく噛めなくなります。歯の最も重要な役目は「物を噛む」ことです。歯並びが悪いままだと噛み合わせのバランスが悪くなり、しっかり噛めなくなります。よく噛まずに食べると胃腸の負担にも繋がるのです。
また、歯並びがガタガタしていると歯ブラシが届かない部分に汚れが溜まりやすくなります。汚れが溜まると虫歯や歯周病が進行する原因になります。
さらに、歯並びが悪いと噛みやすい片側で噛む癖や、一部の歯ばかりに噛む力が偏ると顎に負担がかかり顎関節症になる場合があります。顎関節症になると口の開け閉めがしにくくなり、顎関節に痛みが出ることもあるのです。
噛み合わせ・歯並びが悪いと舌の動きが制限されてしまうことで、特定の発音がしにくくなったり滑舌が悪くなったりすることもあります。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病は様々な全身疾患とも関連していることがわかっています。歯周病菌は歯肉からの出血部位から体内に入り込み、全身のあちこちの臓器で炎症を起こす可能性があるのです。
特に注目すべきは、歯周病と糖尿病の関係です。歯周病があると、どうして血糖値が高くなるのでしょうか。歯周病菌が血管内に侵入すると、体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。
また、近年の研究では歯周病とアルツハイマー病の関連も指摘されています。代表的な歯周病菌であるP.g.菌の出す毒素が、アルツハイマー病患者の脳組織から高頻度に検出されるという報告もあります。
歯並びの悪化は歯周病のリスクを高めるため、間接的に全身の健康にも影響を及ぼす可能性があるのです。
歯並びを改善する効果的な方法
歯並びの悪化に気づいたら、早めに対処することが大切です。ここでは、歯並びを改善するための効果的な方法をいくつか紹介します。
歯並びの改善方法は、症状の程度や原因によって異なります。軽度の場合は生活習慣の改善だけで十分なこともありますが、中度から重度の場合は専門的な矯正治療が必要になることが多いでしょう。
まずは歯科医院で検査を受け、自分の歯並びの状態と最適な改善方法について相談することをお勧めします。
矯正治療の種類と特徴
矯正治療には主に以下のような種類があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選びましょう。
まず最も一般的なのが「ワイヤー矯正」です。歯の表面にブラケットと呼ばれる装置を取り付け、ワイヤーの力で歯並びを整えていく方法です。表側矯正、裏側矯正、ホワイトワイヤー矯正などのバリエーションがあります。
ワイヤー矯正は最も一般的な矯正治療です。歯の表面にブラケットと呼ばれる矯正装置を張り付け、溝部分にワイヤーを通し、そのワイヤーを引っ張る力によって歯を動かしていきます。
歯と顎の骨の間には歯根膜と呼ばれる部位があり、ある程度の力を加えると変形し、隙間が出来たり隙間が縮まったりします。隙間ができた場合、その部分に新しい骨が作られます。ワイヤーによって歯を引っ張ることで歯根膜の隙間を調整し、骨の再生によって歯を固定して行くのがワイヤー矯正のメカニズムです。
次に「マウスピース矯正」があります。インビザラインなどのマウスピース型装置を使用して歯並びを整える方法で、取り外しが可能なため食事や歯磨き時に便利です。
また、「コンビネーション矯正」というマウスピース矯正とワイヤー矯正を組み合わせた治療法もあります。
矯正治療は原則自費診療となるため、治療費用が高額になる場合があります。また、治療期間が長期にわたることや、矯正装置による痛みや圧迫感があることなどのデメリットもあります。
歯並びを整えるために、やむを得ず健康な歯を抜く場合もあるため、治療を受ける際はこれらのデメリットについて十分検討した上で判断する必要があります。
歯並びの悪化を予防するための日常習慣
歯並びの悪化は、日常生活での小さな心がけで予防できることも多いのです。ここでは、歯並びを守るための効果的な習慣をご紹介します。
まず大切なのは、正しい歯磨き習慣です。歯垢(プラーク)は歯周病の原因となる細菌の塊です。歯周病が進行すると歯を支える骨が溶け、歯並びが悪化する原因になります。
毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科検診で歯周病を予防しましょう。歯間ブラシやフロスを使用して、歯ブラシだけでは届かない部分の清掃も忘れずに行うことが大切です。
次に、バランスの良い食生活を心がけましょう。硬いものもしっかり噛むことで顎の筋肉が鍛えられ、歯並びの維持に役立ちます。また、左右均等に噛むよう意識することも重要です。
私の知人は、意識して硬いリンゴや野菜を毎日少しずつ食べるようにしたところ、顎の筋肉が鍛えられ、以前より噛む力が強くなったと実感していました。
口呼吸を改善する方法
口呼吸は歯並びに悪影響を与えることがわかっています。鼻呼吸を心がけることで、口周りの筋肉のバランスを保ち、歯並びの悪化を防ぐことができます。
鼻呼吸を習慣づけるためには、鼻炎などの鼻の問題がある場合はまずそれを治療することが大切です。また、日中は意識して口を閉じ、鼻で呼吸するよう心がけましょう。
就寝時の口呼吸が気になる場合は、耳鼻科や歯科で相談してみるとよいでしょう。場合によっては、マウスピースなどの装置が推奨されることもあります。
ストレス管理と歯ぎしり対策
ストレスによる歯ぎしりや食いしばりは、歯並びに大きな影響を与えます。ストレス管理は歯の健康にも重要なのです。
リラクゼーション技術の習得や、適度な運動、十分な睡眠など、ストレスを軽減する生活習慣を取り入れましょう。
歯ぎしりが心配な場合は、歯科医師に相談してナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)の使用を検討するのも一つの方法です。これにより、歯ぎしりによる歯への負担を軽減することができます。
まとめ:美しい歯並びを維持するために
歯並びの悪化は、加齢、歯周病、悪習慣、親知らず、不適切な歯科治療、そしてストレスや口周りの筋力低下など、様々な原因で起こります。しかし、適切な知識と予防策があれば、歯並びの悪化を防いだり、遅らせたりすることは十分に可能です。
日常生活では、正しい歯磨き習慣、バランスの良い食生活、鼻呼吸の心がけ、ストレス管理などが重要です。また、定期的な歯科検診で早期に問題を発見し、必要に応じて適切な治療を受けることも大切です。
歯並びの問題は見た目だけでなく、全身の健康にも影響します。特に歯周病は糖尿病やアルツハイマー病など、様々な全身疾患とも関連していることがわかっています。美しい歯並びは、健康な体と自信に満ちた笑顔の基盤となるものです。
歯並びに不安を感じたら、まずは専門家に相談してみましょう。Belle歯科・矯正歯科では、患者様の症状だけでなく、普段の生活や将来の計画なども含め、じっくりとお話をした上で、最適な治療計画を提案しています。
あなたの大切な歯を守るため、そして美しい笑顔を維持するために、今日から歯並びケアを始めてみませんか?
著者情報
三宮Lulu矯正歯科 院長 竹内 優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会